『大尉の盟約(上下)』 ロイス・マクマスター・ビジョルド (創元SF文庫)
なんと今回はイワンが主人公。帯にはデカデカと「イワン、偽装結婚する」との文字が。“偽装”結婚とは、なんともイワンらしい。
それにしても、イワンという名前の男は何百年たっても「イワンの馬鹿」と呼ばれ続けるのだろうか。まったく、かわいそうなことで。
ところが、さすがに主人公の今回は、馬鹿というには失礼なほどの有能ぶりを見せ付ける。あまりに有能なマイルズのそばにいるとかき消されてしまっているけれども、イワンも充分に優秀な男なのだよね。
とはいえ、かわいい女の子の絶体絶命の危機を救う手段が、ヴォルである自分と結婚させるというのは、あまりにイワンっぽい解決方法で笑ってしまう。しかも、この二人はちゃんとお互いを好きになってしまうというのだから、さすが、イワンである。
何をやっても「イワンらしい」と読者が思えるのは、著者がそれだけ念入りにキャラクターを造形している証拠。ただの脇役ではなく、もうひとりの主人公足りえるくらいに、これまでにも充分書き込まれてきたということだろう。
前半はそんなこんなで、わけありそうな美少女テユ(巨乳!)とのラブコメタッチなのだが、後半は彼女の家族が出てきて何やらきな臭い感じ。
正直言って、テユの家族が阿呆すぎてなんとも言えない。これだけ阿呆なら、そりゃ、商館乗っ取りに合うだろうさ。
イリヤンも、さすがに往年のキレは無い感じだが、結果的に思い通りになっているし。このひと、外見からは想像できないくらいに、意外と内心ではいろいろなことを面白がってるんじゃないかと。
物語のテーマとしては、テユ側、イワン側双方の家族のキズナというところなのだけれど、いつにもましてコミカルな作風で笑わせてもらった。やはり、これも主人公がイワンだからなのかもしれない。